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なぜ「業務の型化」は、いつも後回しにされるのか
1. 誰もが知っている「正論」
「自動化ツールを入れる前に、まずは業務フローを整理しましょう」
これは、実務において最も頻繁に語られる正論であり、同時に最も無視されている助言でもあります。
多くの経営者や現場リーダーは、頭では理解しています。 ゴミを自動化しても、高速でゴミが生産されるだけであること。 整理されていないプロセスにAIを入れても、混乱が加速すること。
しかし実際には、9割以上の組織がこの工程を飛ばし、 「とりあえずツールを入れて、使いながら考えよう」 という選択をしてしまいます。
なぜ、私たちは「業務の型化」をここまで頑なに避けてしまうのでしょうか。
2. 「後で直す」という幻想
最も一般的な逃げ道は、「柔軟性」という言葉です。
「うちはケースバイケースが多いから、ガチガチに固めると動けなくなる」 「ツールを導入して、便利さを実感してからルールを決めたい」
しかし、これは「柔軟性」ではありません。 「現在の曖昧さを温存したい」という、心理的な現状維持バイアスです。
ツールを導入した後に、業務フローが自然に整うことはありません。 むしろツールは、現在の「曖昧な運用」を固定化させる重力として働きます。 後で直そうと思っていた歪みは、システムが入ることで「仕様」として焼き付けられ、二度と直せないものになります。
3. なぜ組織は「判断」を避けるのか
業務を整理(型化)するということは、 「例外を認めない」と決めることと同義です。
- この様式のデータ以外は受け付けない
- 期限を過ぎた依頼は、誰からのものでも却下する
- 不備のある申請は、自動的に差し戻す
これらを決めることは、心理的な苦痛を伴います。 「融通が利かない」と言われる恐怖。「相手を怒らせるかもしれない」という不安。 それらを避けるために、私たちは無意識に「判断」を先送りし、 「(人が)いい感じに処理する」という余白を残そうとします。
この「優しさ」に見える判断の保留こそが、 自動化を阻む最大の壁です。
4. 構造的な代償
判断を避け、例外を許容し続けた結果、何が起きるでしょうか。
現場の担当者は、システムが処理しきれない「例外」の尻拭いに追われることになります。
- ツールの入力欄には書けない事情を、チャットで補足する
- システムが弾いたデータを、手動で修正して再投入する
- 自動化されたはずの通知が正しいか、全部を目視で確認する
これでは、何のために自動化したのか分かりません。
「判断の先送り」が積み重なった組織では、 どんなに高機能なAIを導入しても、 最終的には「詳しい人」が手作業で微調整する運用に戻っていきます。
5. 覚悟を決める時間
技術的な準備の前に必要なのは、 「曖昧さを捨てる」という組織としての覚悟です。
例外を減らし、ルールを明確にし、 「ここまでは自動、ここからは不可」という線を引くこと。 それは冷たいことではなく、業務を健全に保つための唯一の方法です。
もし、あなたの会社がこの「構造の整理」に向き合う準備ができているなら、 INCIERGEは力になれます。
私たちはツールの導入屋ではありません。 自動化の実装に進む前に、この「構造」が成立しているかどうかを、 客観的な視点で診断し、確認します。
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