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山梨の中小企業で「DXが進まない」本当の理由 — AIでも補助金でもなく、“業務構造”の話です

2025/12/18 INCIERGE
山梨 業務構造 DX 経営

山梨の中小企業で「DXが進まない」本当の理由

— AIでも補助金でもなく、“業務構造”の話です

1. 導入|山梨で語られるDXへの違和感

山梨県内でも、「DX」や「AI活用」という言葉を日常的に耳にするようになりました。 新聞を開けば県内企業の導入事例が紹介され、行政や商工会議所からは補助金の案内が届きます。セミナーに参加すれば、最新のクラウドツールがいかに便利かを説かれます。

これら自体は、決して間違ったことではありません。地域の産業をアップデートしようとする、前向きな動きです。

しかし、実際の「現場」はどうでしょうか。

ある経営者は「iPadを入れたけれど、結局紙の伝票も見ている」と苦笑いし、 ある担当者は「新しいシステムと古いエクセル、両方に入力しなければならなくて仕事が増えた」と嘆きます。

表向きには「DX推進」が語られながら、現場の負担は減っていない。むしろ、新しい道具が増えたことで混乱が生じている。 この「ちぐはぐな感覚」に、多くの人が気づき始めています。

なぜ、これほど熱心にDXが叫ばれているのに、現場は楽にならないのでしょうか。

2. なぜ、ツールやAIは定着しないのか

「社員のITリテラシーが低いから」 「変化を嫌う風土があるから」 「導入したツールの機能が足りなかったから」

DXがうまくいかないとき、よく挙がる理由です。しかし、これらは本質的な原因ではありません。

最新のAIも、高機能なクラウドツールも、しょせんは「道具」です。 道具である以上、それを使うための「手順」や「ルール」が整っていなければ、機能することはありません。

整理整頓されていない散らかった部屋に、最新のロボット掃除機を放り込むようなものです。 ロボット掃除機は、床にある物を避けることはできても、散らかった物を「あるべき場所」に戻すことはできません。結果として、掃除機はエラーで止まり、人間がそれを救出する手間が増えるだけです。

山梨の現場で起きているのは、これと同じことです。 業務という「部屋」が散らかったまま、ツールという「掃除機」を導入してしまっている。だから、定着しないのです。

3. 本当の問題は「業務構造」の不在

私たちが直面している問題の正体。 それは、ITの遅れでも予算不足でもなく、**「業務が構造として存在していないこと」**にあります。

多くの中小企業において、仕事は「構造」ではなく「人」に張り付いています。

「この見積もりは、あの人にしか作れない」 「在庫の確認は、倉庫に行って見てくるのが一番早い」 「この問い合わせへの回答は、過去のメール履歴を掘り返さないと分からない」

これらは全て、業務の流れや判断基準が、特定個人の頭の中や、その場の口頭連絡だけで処理されている状態です。これを「業務構造がない」と呼びます。

構造がない状態でITツールを入れると、どうなるか。 ツールに入力するデータが人によってバラバラになり、出力されたデータも信頼できないものになります。結果、誰もその画面を見なくなり、「やっぱり紙と電話が早い」という結論に戻ります。

AIやDXが魔法のように語られることがありますが、それらは「しっかりとした構造の上」でしか動きません。 構造なきDXは、砂上の楼閣です。

4. 地方だからこそ、構造が重要になる

「それは大企業の話だろう。うちは少人数で回しているから関係ない」

そう思われるかもしれません。しかし実際には、少人数で回している地方の中小企業こそ、業務構造の整備が死活問題になります。

大企業には、人が大勢います。ある程度非効率な業務があっても、人の数でカバーできる側面があります。 しかし、山梨の中小企業にはその余裕はありません。一人の退職が、業務停止のリスクに直結します。社長やベテラン社員が、プレイヤーとして現場を走り回らなければなりません。

また、経営者と現場の距離が近いことも特徴です。 これは強みですが、「阿吽の呼吸」で仕事が回ってしまうため、構造化が後回しにされやすいという弱点でもあります。

「言わなくても分かる」関係性は尊いものですが、それは「その人がいなくなったら誰も分からない」リスクと背中合わせです。 地方企業が生き残るためには、属人性に依存しない、強い「骨格」が必要です。

5. 「業務構造」とは何か

では、Inciergeが考える「業務構造」とは何か。 難しい定義ではありません。仕事の流れを、以下の3つに分解して説明できる状態のことです。

  1. 入力(Input) その仕事は、いつ、どこから、どんな情報が入ってくることで始まるのか。
  2. 判断(Logic) その情報を、誰が、どんな基準(ルール)で処理・判断しているのか。
  3. 出力(Output) 処理された結果は、どんな形で、誰に渡されるのか。

非常にシンプルです。しかし、「自社の見積もり業務について、この3つを明確に説明してください」と言われて、即答できる企業は多くありません。

「ケースバイケースですね」 「だいたいこんな感じです」

曖昧な言葉で語られる部分。そこに、例外処理や属人的な判断が隠れています。 業務構造をつくるとは、この曖昧さを一度テーブルの上に広げ、整理し、誰が見ても分かる「設計図」に書き換える作業です。

6. Inciergeの立ち位置

Incierge(インシェルジュ)は、特定のツールを売るための会社ではありません。 「AI導入支援」を謳っていますが、AIありきで話をすることもありません。

私たちが大切にしているのは、**「まず、構造を見る」**という一点です。

お客様の会社にお邪魔し、業務の棚卸しを行い、絡まった糸を解くように仕事の流れを整理する。「ここは人が判断すべき」「ここは機械に任せられる」という線を、一つひとつ引いていく。

私たちが提供したいのは、便利なツールではなく、その手前にある「整った業務の状態」です。

構造さえ整えば、そこに載せるツールはkintoneでも、Excelでも、あるいは最新のAIでも構いません。道具は、時代に合わせて変えていけばいいのです。しかし、業務の骨格となる構造は、会社の資産として残り続けます。

7. 結わり

AIが人間の仕事を奪う、という議論があります。 しかし、現場の業務構造に向き合っていると、まったく違う景色が見えてきます。

構造化によって、人間は「転記」や「検索」といった作業から解放されます。 その分、空いた時間と頭脳で、「このお客様にはどう提案すれば喜ばれるか」「次の事業をどう展開するか」といった、本来人間がすべき判断に集中できるようになります。

構造を整えることは、人間を機械のように扱うことではありません。 むしろ、人間が人間らしい仕事をするための土台を作ることです。

あなたの会社の業務は今、 「構造」の上にありますか? それとも「人」の上にありますか?