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「名簿」から「台帳」へ。士業事務所のための顧客データベース設計(最小の型)

2025/12/17 INCIERGE
士業 業務自動化 顧客管理 データベース

なぜ「顧客リスト」があっても管理できないのか

「事務所には顧客リストがあるはずなのに、なぜか案件の進捗はわからない」

多くの事務所が抱えるこの矛盾の原因は、情報が「静的(静止画)」だからです。 住所や電話番号といった「変わらない情報」だけを管理していても、日々の業務(動的な情報)は管理できません。 必要なのは、名刺入れのような名簿ではなく、常に書き換わり続ける「台帳(データベース)」です。 これは、顧客管理の自動化構造を実現するための最も基礎的なインフラとなります。

本記事では、小規模〜中規模の士業事務所が導入すべき、最もシンプルで効果的なデータベース設計を紹介します。

この記事のゴール

  • Excel管理が破綻する構造的な理由を知る
  • 「ステータス」の定義を統一する
  • 他の自動化ハブ(請求・資料回収)との連携イメージを持つ

1. 失敗する「管理項目」の増やしすぎ

データベース導入時にやりがちな失敗は、「念のため」といって入力項目を増やしすぎることです。 「設立日」「決算月」「従業員数」「資本金」「前回の面談メモ」…。 項目が多すぎると、入力が面倒になり、結局誰も更新しなくなります(形骸化)。

最初に管理すべきは、以下の3点だけです。これを「最小の型」と呼びます。

  1. ステータス(現在の状態): 未着手 / 処理中 / 確認待ち / 完了
  2. ボール持ち(誰のターンか): 事務所 / 顧客 / 役所
  3. ネクストアクション期限: 次、いつまでに動くべきか

この3つさえ最新であれば、事務所は回ります。他の情報は後からでも構いません。

2. 「ステータス」の定義が全てを決める

最も重要なのが「ステータス」の定義です。ここが曖昧だと、所長とスタッフで認識が食い違います。

悪い例:作業内容ベース

「入力中」「計算中」「再入力中」… これらは作業の詳細すぎて、一覧で見た時に「順調なのか遅れているのか」が分かりません。

良い例:ボール(責任)の所在ベース

  • 【未着手】: まだ何もしていない
  • 【顧客待ち】: 資料待ち、質問回答待ち(→ 資料回収自動化へ連携)
  • 【所内処理中】: スタッフ作業中
  • 【所長確認中】: スタッフから上がり、所長の承認待ち
  • 【完了】: 請求へ(→ 請求管理自動化へ連携)

このように「誰がボールを持っているか」でステータスを区切ると、滞留している箇所が一目瞭然になります。

3. 自動化との接続

データベースが整うと、ステータス変更をトリガーにした自動化が可能になります。

  • ステータスが「顧客待ち(資料)」になったら → 自動でリマインド送信
  • ステータスが「完了」になったら → 自動で請求書発行・送付
  • ステータスが「所長確認中」のまま3日経過したら → 所長へアラート通知

顧客管理の自動化構造で解説した通り、 データベースは単なる記録場所ではなく、次のアクションを自動で起動させる「スイッチ」の役割を果たします。

まとめ:入力コストを下げる

高機能なCRMツールを入れる必要はありません。kintoneなどの汎用ツールや、Googleスプレッドシートでも十分です。 重要なのは、「入力する項目を絞る」ことと、「ステータスの定義を決める」こと。 この2つがないまま高価な専用システムを入れても、ただの「高い電話帳」になってしまいます。

まずは今のExcel等の項目を半分に減らすことから始めてみてください。