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「言った言わない」をなくす。コミュニケーション履歴の統合によるタイムライン管理術

2025/12/17 INCIERGE
士業 業務自動化 顧客管理 コミュニケーション

「あの件、どうなってたっけ?」が奪う時間

「A社さんから電話だよ」と取り次がれた時、あなたは瞬時にこれまでの経緯を思い出せますか? 「先週メールで送った件なんだけど」と言われて、慌ててメーラーの検索窓に社名を打ち込み、ヒットした大量のメールから該当の1通を探す。 そうこうしているうちに、「あ、それはChatworkで送ったやつだった」と思い出す。

通信手段多様化により、士業事務所の情報は「断片化」しています。 この断片化を放置すると、担当者が休んだ瞬間に業務がストップするという、強烈な属人化リスクを抱えることになります。

本記事では、バラバラなやり取りを「タイムライン」として統合する考え方を解説します。

この記事のゴール

  • 「ツール別」ではなく「顧客別」管理への転換
  • 電話メモをデジタル化する意味を知る
  • 一次対応(トリアージ)との連携イメージを持つ

1. ツールではなく「顧客」を主語にする

私たちは普段、無意識に「ツール」を主語にして仕事をしています。 「メールを見る」「LINEを返す」「チャットを確認する」。

これを「顧客(A社)」を主語に変える必要があります。 「A社とのやり取りを見る」。 その中身がたまたまメールだったりLINEだったりするだけです。

理想は、顧客データベースを開けば、時系列(タイムライン)で全てのやり取りが並んでいる状態です。

  • 2025/12/01 10:00 [LINE] スタッフ:資料督促
  • 2025/12/02 14:00 [電話] 所長:決算の事前相談(メモあり)
  • 2025/12/03 09:00 [メール] 顧客:資料送付
  • 2025/12/03 09:30 [System] ステータス変更:処理中

2. アナログな電話も「イベント」として記録する

統合の最大の敵は「電話」と「口頭」です。ここだけデジタルな履歴が残りません。 しかし、士業にとって電話での助言は重要な成果物です。

「通話録音テキスト化ツール」などを導入するのがベストですが、まずは「電話を切ったら1行メモを残す」ルールを徹底するだけでも効果があります。 問い合わせ対応(トリアージ)の仕組みと連動させ、受電メモをチャット等の共有スペースに放り込むだけで、それがタイムラインの一部になります。

3. 「オープン・バイ・デフォルト」の文化

履歴を統合しても、それが「担当者しか見られない場所(個人のメールボックス等)」にあっては意味がありません。 原則として、すべてのやり取りは事務所内の誰もが見られる状態(オープン)にしておくべきです。

  • CCを入れるルールをやめる: メーリングリストや共有メールボックスを使う
  • 個人のLINEを使わせない: ビジネス版(LINE WORKS等)や公式アカウントを使う
  • DM(ダイレクトメッセージ)禁止: チームが見えるチャンネルで会話する

「見られているから監視されている」のではなく、「見えているから助けてもらえる」という文化を作ることが、情報統合の第一歩です。

まとめ:記憶の外部化

人間の脳は、事実を時系列で正確に記憶するのが苦手です。 一方で、システムは「いつ、誰が、何をしたか」を記録するのが得意です。

すべてのコミュニケーションをタイムラインという一本の線に乗せることで、 「言った言わない」の水掛け論はなくなり、担当者が変わってもスムーズな引き継ぎが可能になります。 顧客管理の自動化構造という全体設計の中で、この「履歴統合」がいかに重要なピースかを見直してみてください。